口座が10倍になっても、私はいまと同じように注文を出せるだろうか。
一度、本気でそれを考えたことがあります。たぶん出せない、というのが自分の答えでした。
私は一回のトレードで失ってもいい額を、口座の2%と決めています。決めてから、一度も変えていません。
口座が10倍になっても、2%は2%のままです。10倍の口座なら失う額も10倍になりますが、比率は動きません。損切り1回で減る割合は、口座がいくつになっても最初の日と同じままです。
なので理屈の上では、口座が大きくなってもやることは一つも変わりません。それでも私が「たぶん出せない」と答えたのは、一つだけ変わるものがあるからです。それは、損切りされたときに口座から引かれる数字の桁だけでした。

%で決めた瞬間に、金額は考えなくてよくなります
私は注文を出す前に、金額を先に決めません。金額はいちばん最後に出てくるので、多くの人とは順番が逆になります。
先に決めるのは損切りの位置です。1時間足の押しの底の下(底が二つなら低いほうの下)。その位置と入る値段の差が、損切りの幅になります。あとは「その幅に当たったときに口座の2%が減る」ように枚数を割り算するだけです。
説明用に、数字を入れてみます。口座が100万円なら、払っていい額は2万円。
損切りの幅が20pipsだとします。1pipsが200円動く枚数を持てば、20pips×200円で4万円になってしまう。だから枚数は半分にする。ここまでが割り算で、金額はこの計算の中にしか出てきません。
この順番だと、枚数は毎回違う数字になります。損切りが近い日は多く、遠い日は少ない。自分では選んでいません。枚数はその日の損切りの幅から出てくる、割り算の答えでしかありません。
枚数を決めているのは私ではなく、その日の損切りの幅です。
なので「今日は自信があるから多めに」という考えは、そもそも入る場所を持ちません。割り算の式のどこにも、自信という項が無いからです。
比率は、口座の大きさを知りません
私がこの決め方を変えない理由は、ここにあります。
2%というルールは、口座の大きさをまったく参照していません。10万でも1000万でも、割り算の式は同じです。
10連敗したときに残る割合も同じです。手法の期待値も、資金の大きさで変わりません。同じ形が出て、同じ場所に注文を置いて、同じ取り分を狙う。
つまり、この設計はそのまま拡大できます。小さい口座で回すことと大きい口座で回すことのあいだに、手順の違いがありません。

「資金が増えたら勝てなくなる」と、よく聞きます
資金が増えたら同じようには勝てなくなるはずだ。冒頭で私が考え込んだのも、もとはそこでした。
大きな資金を運用する人たちには、実際にその制約があります。注文が大きすぎて、自分の注文で値段が動いてしまうからです。買いたい値段で買い切れず、平均の値段が悪くなる。これは作り話ではなく、実際に起きていることです。
ただ、それは数千億という単位の話です。為替は世界でいちばん取引されている市場で、個人が出す枚数では値段は動きません。個人にとっては、当分のあいだ関係のない制約です。
だから、私たちの%を落とす犯人は市場ではありません。
落ちるのは手法ではなく、ボタンの前で止まる指です
同じ2%でも、損切りされたときに動く数字の桁が一つ増えれば見え方は変わります。
ルールは1文字も変わっていません。それでも、たぶん私の指は確定ボタンの前で止まります。
損切りを少しだけ外に動かしたくなる。枚数を割り算の答えより、少しだけ減らしたくなる。そうやって手が縮んだ分だけ、取れるはずだったRが取れなくなります。
減るのは手法の性能ではなく、桁が増えたときに縮む私のほうです。
だから私は、「金額でどう感じるか」を先に練習の対象に入れました。といっても、特別なことはしていません。記録には金額も残しますが、良し悪しを判断するときに見るのはRだけにしています。
Rというのは、その一回で払うと決めた額を1と数える単位です。決めた額をそのまま失えば−1R、その3倍取れれば+3R。
金額の桁は、いつか勝手に増えます。増えたときに手が縮まないよう、いまのうちに金額で数えるのをやめておくという話です。

小さいうちに、体に覚えさせておくもの
いま口座が小さいことを、私は不利だと思っていません。
小さい口座は、桁の小さい数字で同じ手順を繰り返せる場所です。同じ形を探して、同じ場所に置いて、外れれば同じ1Rを払う。この繰り返しに慣れておけば、桁が増えたときに変わるのは景色だけになります。
逆に、いま金額で一喜一憂する癖を付けるとその癖も一緒に拡大します。拡大するのは口座だけではありません。
比率は、口座の大きさを知りません。
重くなったと感じているのは、私だけです。
次に読む
——枚数を自分で決めるのをやめた話。
——口座の大きさを、自分で変えにいくときのルール。
——手順が変わらない理由を、事業との対比から書いた記事。
損切りの幅から枚数を逆算する手順は、無料の一冊に図解で載せています。


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本記事は私の経験と考え方の共有であり、特定の金融商品の売買を推奨・勧誘するものではありません。
投資には元本を割り込む損失のリスクがあり、最終的な判断はご自身の責任で行ってください。




