たった一回の取引で、それまで積み上げた利益を私はまとめて吹き飛ばしたことがあります。
形は綺麗でした。流れも向いていた。だから私は「ここは自信がある」と思い、いつもより多く賭けた。
——多く賭けた、よりによってその一回が逆へ走りました。
気づけば、コツコツ重ねてきた小さな勝ちがその一発で帳消し。残ったのは引くに引けない大きさに膨らんだ建玉を抱えて固まった指と、画面を直視できない長い夜でした。
退場しかけたのは下手だったからではありません。賭ける量を、その都度変えていたからでした。

「自信があるから多め」が、口座を殺す
正直に告白します。
退場する人のほとんどはエントリーが下手なのではありません。資金の配分で死にます。私もそうでした。
「ここは堅い」と思えば量を増やし、「自信がない」と思えば減らす。一見賢い調整に見えます。でも、ここに落とし穴がある。
自信があるときほど、人は外す。
自信とはたいてい願望の別名です。そして願望が乗った一回ほど大きく賭けてしまう。だから外したときの傷がいちばん深くなる。
自信と量を連動させると、最悪の一回に最大の額が乗る仕組みが自動的に出来上がる。賢く調整しているつもりで、私は自分を殺す装置を毎回組み立てていたのです。

「ここは特別」を、一つも作らない
私が口座を守れるようになった、その分岐点はひとつのルールでした。
どの取引でも、一回の負けで失う割合を同じに揃える。
私の場合は、口座の2%です。
相場の状況がどうでも、値動きが荒かろうが穏やかだろうが自信があろうがなかろうが、一回の損失で減る口座の割合は常に一定です。状況で変えません。
「ここは特別」という例外も、作りません。例外は一つ許すと二つになり、最後はルールごと無くなるからです。
この一定割合は派手な勝ちを諦める代わりに、退場だけはしないと決めた水準です。割合を上げれば、当たった日のリターンは大きくなる。でも外した日のダメージも同じだけ大きくなり、連敗が来たとき口座が立ち上がれなくなる。
私はその誘惑を切り捨てて、「一回の負けでこれ以上は減らさない」という上限のほうを利益の最大化より上に置きました。
※ なぜ2%なのか——その数字の根拠(連敗の算数)は『期待値は、生き残った人にしか払われない』に書きました。
つまり私は、攻めの取引なのに配分だけは徹底して守りに振っています。この組み合わせが、長く続けるための前提になります。
派手な勝ちは減った。事故は消えた
「自信があるから多め」をやめた日から、私は退場しなくなりました。派手な勝ちは減りました。でも、一発で全部を失う事故が構造的に起きなくなった。
相場で長く生き残るとは大きく勝つことではありません。致命傷を負わない設計の中に、自分を閉じ込めることです。
考えてみてください。損1に対して利益3を地道に何度も積み上げたとします。その積み上げをたった一回の「特別な自信」で、いつもの数倍を賭けて飛ばす。すると、コツコツ取った何回ぶんもの利益がその一回で消える。
割合を一定に保っていれば、最悪の一回でも減るのはいつもと同じ一回ぶんだけ。次の取引にちゃんと同じ顔で戻ってこられる。
量を揃えるとは未来の自分に再起する余力を残しておくことなのです。

量は「先に決めない」——損切りの幅から、逆算する
ここが多くの人と逆になる一点です。私は賭ける量を先に決めません。
手順はこうです。
つまり量は結論であって、出発点ではない。
先に「何枚買うか」を決めて、後から損切りを動かすのは順番が逆です。それをやると、損切りが「都合のいい場所」に動かされ構造が壊れる。
損切りをどの構造ラインに置くか自体の詳しい話は別記事『損切り貧乏だった私が、財布をしまった日』に譲りますが、ここで言いたいのは一点だけ——位置を先に決め量は幅から導く。 その順番です。

幅が広い日は量が小さくなる。幅が狭い日は量が大きくなる。結果として、どの取引も外したときの痛みが同じ重さに揃う。
この「同じ重さ」が心を平らに保ってくれます。痛みが毎回バラバラだから、人は怖くなったり強気になったりする。痛みを一定にすれば、相場に対していつも同じ自分で立てる。
私を退場させなかったのは、この退屈さでした
毎回同じだけ賭ける。退屈なルールです。胸の躍るところは一つもありません。
でも私を相場から退場させなかったのは冴えた読みでも特別な才能でもなく、この退屈なルール一つでした。
- 自信と量を連動させると、最悪の一回に最大の額が乗る仕組みができる
- どの取引でも、一回の負けで失う割合を同じに揃える(私の場合は口座の2%)
- 「ここは特別」を一つも作らない。例外は一つ許すと二つになり、最後はルールごと無くなる
- 量は先に決めない。損切りの位置を構造から決め、その幅から逆算する
- 痛みが一定に揃うから、相場に対していつも同じ自分で立てる
——とはいえ、これは私の口座で起きた話でしかありません。私を信じて真似する前に、あなた自身の過去の取引を並べてみてください。
いちばん深く削られたあの一回、あなたはいつもの何倍賭けていましたか。「ここは堅い」と思った日ほど、量が膨らんでいなかったか。——それはあなたの取引履歴にはっきりと残っています。
並べて出てきた「いつもの何倍」という数字を、記事末のご案内から無料の一冊を受け取ると届くメルマガに返信で送ってください。個別のお返事はしていません。でも倍率が揃っていた、という報告でも構いません。全部読んでいます。
派手さはいりません。長く生き残る者はいつも退屈な側に立っています。
次に読む

——量を揃えた次は、場所を揃える。私が賭ける一点の話です。

——「自信があるから多め」の正体を感情の側から解剖しました。

——口座の中の量の前に、口座に入れるお金そのもののルールです。
量の逆算の出発点になる「損切りを置く形」——私が入る場所はひとつしかありません。その形の全体像を、チャート設定と一緒に無料の一冊へ落としてあります。

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本記事は私の経験と考え方の共有であり、特定の金融商品の売買を推奨・勧誘するものではありません。
投資には元本を割り込む損失のリスクがあり、最終的な判断はご自身の責任で行ってください。

