勝率は高かったのに、口座だけが減っていった

「勝率を上げれば、勝てる」。これはトレードの世界でいちばん根強い信仰です。

私はその信仰を捨てました。捨てた日から、口座が減らなくなったからです。

——勝率だけは高かった時期が私にもありました。

打てば、そこそこ当たる。普通なら、勝っているはずです。なのに、口座の残高は月を追うごとにじりじり減っていきました。

からくりは情けないほど単純でした。

少しでも含み益が出ると、減るのが怖くてすぐに利確する。指がうずいて、利益が育つ前に自分から摘み取ってしまう。逆に、含み損は「もう少し待てば戻る」と損切りを伸ばす。こうすれば、たしかに「勝った回数」は増える。勝率という数字だけは誇らしく光る。けれど中身は小さな勝ちをたくさんかき集めては、数回の大きな負けで全部吐き出していました。

私はずっと勝率を上げれば口座も増えると信じていました。

違いました。「外したくない」という、人として自然な感情こそが私の口座を削っていた犯人でした。今日は勝率が5割を切っても口座が残る仕組みを電卓ひとつで分解します。

目次

数字は、感情より正直だった

仮に、10回トレードして5勝5敗。勝率はちょうど5割、コインの裏表と同じです。

ここで負ける時は「1」だけ失い、勝つ時は「3」取れるとしたらどうなるか。

  • 負け5回 → マイナス5
  • 勝ち5回 → プラス15
  • 合計 → プラス10

半分外しているのに、口座は増えます。これが損1に対して利益3を狙う取り方の中身です。

そして昔の私がやっていた「すぐ利確・損切りは伸ばす」はどれだけ勝率が高くても、1回の負けが3回分の勝ちを丸ごと食べてしまい結果マイナス。

思い返すと、滑稽でした。

勝率が高い月、私は得意げだったんです。心の中で「当たってる」と胸を張り、含み益が出るたびに減るのが怖くて小さく利確しては「また当てた」と安心する。当てた回数を数えては悦に入り、その裏で残高がじわじわ痩せていく事実からは目をそらしていた。

胸を張る根拠にしていた数字そのものが口座を削る原因だった。誇らしげに勝率を抱きしめながら、私は自分の手で自分の口座を餓えさせていたんです。

当てるのを、やめた

この仕組みの本当にいいところは一回一回を当てなくていいことです。

勝率を上げようとすると、人は「外したくない」の塊になります。含み益を見れば、逃げたくて指がうずく。利益が育ちきる前に、自分から摘み取ってしまう。これが「損1:利益3」を自分の手で壊す行為でした。

だから私は当てるのをやめました。

今やっているのは「形が崩れる構造の外に損切りを置いて、利益はトレンドが続くかぎり放っておく」だけ。どこまで伸びるかは相場に決めさせる。本物か騙しかも入る前には決めつけない。入口に待ち伏せの注文を置いて、来たら乗る、来なければ見送る。それだけです。

※ この「入口に待ち伏せの注文を置く」やり方は『相場を追うのをやめて、罠を仕掛けて立ち去る』に書きました。

当てにいくのをやめたら、外れても心臓が跳ねなくなりました。

外れは「悪いデータ」ではなく、最初から織り込み済みの5回のうちの1回でしかないからです。

何もしていない時間が、一番の仕事だった

ここがこの記事でいちばん腑に落ちてほしいところです。

「何もしない時間」こそがこの取り方のエンジンでした。

どちらに転んでもおかしくない五分五分の場所、というのが相場にはあります。賭けても損と得が釣り合ってしまい、続けるほど手数料のぶんだけ期待値——1回あたりの平均の損益——が静かにマイナスへ沈んでいく場所。そこで打てば勝率がたまたま上振れた月があっても、長く均せば負け越していく。だから私は、五分の場所では一切打ちません。手が出そうになるのをただ我慢する。

逆に損切りを構造の外に置いてもなお幅が小さく収まり、利益はその何倍も伸びそうな場所。損より得のほうへ天秤がはっきり傾いている場所。そこだけで打つ。

期待値が自分の側にある場所だけを選んで振るから、勝率が5割を切っても口座は増えていく。

待つことも、見送ることも、傍から見ればただ何もしていないように見えます。でも、それが一番大事な仕事でした。

私はかつて「チャンスを逃すのが怖い」という一心で、分のない場所で何度も何度も振っていました。今になって分かります。逃したと思っていたものの大半はそもそもチャンスではなかった。チャンスでないものは逃しても、何も失っていなかったんです。

勝率という神様を降ろす
  • すぐ利確して損切りを伸ばせば、勝率だけは上がって口座は減っていく
  • 5勝5敗でも「負けは1、勝ちは3」なら合計プラス10。半分外しても口座は増える
  • 当てるのをやめる。損切りは形が崩れる構造の外に置き、伸びは相場に決めさせる
  • 五分五分の場所では打たない。待つことも見送ることも、一番大事な仕事
  • 期待値が自分の側にある場所だけで振るから、勝率が5割を切っても口座は増える

物差しを変えると、行動が先に変わる

最後に、これだけは言わせてください。

この記事も鵜呑みにしないでほしいんです。勝率という数字はあなたの口座の増減とたぶん一致していません。一致しているのはRR(リスクリワード=1回の負けに対して勝ちが何倍か)のほうです。腑に落ちないなら過去のトレードを10個、損と利益の比率で並べてみればいい。数字は私よりずっと正直です。

次のトレードの前に、「これは損1に対して利益が3取れる場所か」を一言だけ書いてください。取れないなら見送る。そして1週間、その記録を残す。

振り返るときに見るのは勝率ではなく、「損1:利益3の場所だけで入れたか」。評価する物差しを変えると、不思議なくらい行動のほうが先に変わります。

1週間書き終えたら、そのうち何回が「損1:利益3の場所」だったか。その回数を、記事末のご案内から無料の一冊を受け取ると届くメルマガに返信で送ってください。個別のお返事はしていません。でも、一度も書けずに終わったという報告でも構いません。全部読んでいます。

私はそれを変えた日から、口座が静かに減らなくなりました。——勝てる人になったのではありません。勝率という、長く信じてきた神様を降ろしただけです。


次に読む

——「損1」を守る側の技術。損切りは構造の外に置きます。

——では勝率はいくつあれば足りるのか。境界線を計算した話です。

——その期待値が支払われる条件、「回数」を守る算数の話です。

——勝率が高いのに減っていく、あの取引の正体を1本の線で解剖した話です。

この「損1に対して利益3が乗る場所」を、どの足の・どこで見つけるか。私が使っている設定ごと、無料の一冊にまとめてあります。

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【ご確認ください】
本記事は私の経験と考え方の共有であり、特定の金融商品の売買を推奨・勧誘するものではありません。
投資には元本を割り込む損失のリスクがあり、最終的な判断はご自身の責任で行ってください。


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この記事を書いた人

トレードの本質を語ります。聖杯も未来を言い当てる方法もありません。あるのは相場の流れを見極め、優位性が生まれるまで待ち、間違えたら撤退するという地味な積み重ねだけです。私を信じる必要はありません。すべてご自身のチャートで確かめてください。

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