環境認識ができていない。
負け続けていた頃、自分の負けを説明する言葉として私はこれを一番よく使っていました。原因が分からない時、この言葉はとても便利でした。負けたのに、自分が悪くない気がしてくるからです。上の時間軸を見ていなかったから負けた。だからもっと見よう、と。
それで私は、月足を開きました。週足も、日足も、4時間足も、1時間足も、15分足も、5分足も。当時の私の机にはモニターが6枚並んでいて、その全部に違う時間軸を映していました。全部の向きを確認してから注文を出す。環境認識という宿題を、真面目にやったつもりでした。
結果は、逆でした。手が止まるようになったんです。日足は上、4時間は下、1時間はまた上。6枚の画面を左から右へ、右から左へ何度も往復してそのうち自分が何を確かめていたのかを忘れる。どれを信じればいいのか分からず、見送るでもなく入るでもない時間だけが増えていきました。
今日は、その勘違いの話です。私に足りなかったのは環境認識ではありませんでした。やりすぎていたのです。いま私が一つの場面で実際に使っている足は、2つしかありません。

環境認識は、情報を増やす作業ではありませんでした
まず、言葉の整理からさせてください。
MTF分析——マルチタイムフレーム分析は、「複数の時間軸を見る分析」と説明されます。間違ってはいません。ただ、この説明を読んだ人のほとんどは私と同じ勘違いをします。見る足の数が多いほど、精度が上がる、という勘違いです。
先に言っておくと、私はダウ理論もエリオット波動もそのまま使っています。捨てたのは、理論を当てはめる足の数だけです。
実際には、逆のことが起きます。
足を1つ増やすと、判断材料が1つ増えます。判断材料が増えるということは、「入らない理由」も「入る理由」も両方増えるということです。7つの足を並べれば、どんな場面にも必ず賛成票と反対票が入ります。多数決は永遠に決着しません。
私が「環境認識ができていない」と思っていた時間の正体は、これでした。認識が足りなかったのではなく、認識した情報を捨てる基準がなかったんです。
環境認識とは、情報を集める作業ではありません。見なくていい足を、先に確定させる作業です。
方向を決める仕事は、週末に終わっています
私の週の中でいちばん重い判断は月曜日ではなく、日曜日に済んでいます。
週末に週足だけを開いて、その通貨の流れが上なのか下なのかをダウ理論の高値・安値の切り上げ切り下げで見ます。それとも線が寄って何も決まっていないのか。上なら、その週は買いしか考えません。下なら売りだけ。決まっていなければ、その通貨は今週の候補から外します。
ここで決めた方向を、私は平日に動かしません。月曜の朝に4時間足が反対に動いていても、変えません。上の足の流れが変わるには、それなりの時間がかかるからです。数時間で覆るような判断を、週足はしていません。
つまり、平日の私にとって方向はもう「与件」です。考える対象ではなく、前提として最初から置かれているものになっています。この話は『私の月曜日は、3分で終わる』に手順ごと書きました。
環境認識の8割は、ここで終わっています。
平日に使う足は、2つです
では平日、実際にチャートの前で何を見ているか。2つだけです。
1つめ=決める足。 週足で決めた方向に、いま実際に動きが始まろうとしている足です。私の場合は日足か4時間足のどちらか、ではなく「先に線が寄って離れた方」です。私が選ぶのではなく、形が出た足がその日の決める足になります。ここでは、いちばん短い移動平均線が中期の線に一度近づいてそこからまた離れていく形を探します。線が寄って、また離れる。この「離れ始め」だけを探します。エリオット波動でいえば第2波が終わって第3波が動き出す場所だけを見ている、ということです。
※ なぜ取る波を第3波の1つに絞ったのかは『私は、5つの波のうち1つしか取りません』に理由ごと書きました。
2つめ=入る足。 決める足から、2つ下の足です。日足で見つけたなら1時間足、4時間足で見つけたなら15分足。ここで注文を置きます。押しが入ってダブルボトムの形になったら、そのネックライン——2つの谷の間にできた戻り高値のことです——の少し上に逆指値を置いてあとは離れます。
この2つで、私の作業は全部です。

1つ下の足は、見ます。けれど、使いません
ここが、私がいちばん長く間違えていたところです。
決める足の1つ下——日足で見つけたなら4時間足——には、いちばん派手な動きが出ます。第3波が走るのは、この足です。上がる時はここが一番よく伸びて見えますし、見ていて一番気持ちがいい。だから私は、ずっとここで注文を出そうとしていました。
うまくいきませんでした。理由は単純で、損切りを置く場所が遠すぎるからです。この足の押し安値を割るまで待っていると、失う額が大きくなります。同じ判断で同じ形を狙っているのに、取り分だけが悪くなる。
かといって3つ下、4つ下まで降りると今度は逆のことが起きます。細かすぎて、上の流れと関係のない小さな上下を全部拾ってしまう。虫眼鏡で地図を読むようなものです。
2つ下は、その中間にあります。上の流れが壊れたと言える場所が、まだ近い。それだけの理由です。技術ではなく、距離の問題でした。
だから1つ下の足は、いまも毎日開きます。ただし、見るだけです。ここで注文は出しません。走っているのを確認して、そのまま2つ下へ降ります。

見ない足を決めたら、迷いが消えました
私の口座が減っていた頃と今とで、チャートの見方はほとんど変わっていません。変わったのは、開かない足を決めたことです。
5分足は、開きません。月足は、方向を確認する時に一瞬だけ。1つ下の足は見ますが、そこでは注文しません。
これだけで、あの「日足は上、4時間は下、どっちだ」という会議が頭の中から消えました。会議が消えたのは、そもそも投票権を持つ足を2つに減らしたからです。正しい結論を出せるようになったわけではなく、会議の席を減らしただけです。
判断が速くなったのは、賢くなったからではないんです。
決めることを、減らしただけでした。
画面を減らしてから、相場の外にいる時間が増えました。私が欲しかったのは、たぶん最初からそちらでした。
- 環境認識は、情報を集める作業ではなく、見なくていい足を先に確定させる作業
- 方向は週末に週足で決めて、平日は動かさない(与件)
- 決める足=線が寄って、また離れ始めた足。入る足=そこから2つ下
- 1つ下の足は見るだけ。注文は出さない(損切りを置く場所が遠すぎる)
- 5分足は開かない。月足は方向を確認する時に一瞬だけ
「環境認識ができていない」の中身を、分けてみてください
もし今負けた理由を「環境認識が甘かった」と書いているノートがあるなら、その一行を2つに割ってみてください。
一つは、方向を見ていなかった負け。上の足が下を向いているのに買った。これは環境認識の失敗です。
もう一つは、方向は合っていたのに入る場所が悪かった負け。上の流れには乗っていたのに、細かい足で飛び乗ってその後の小さな戻りで損切りにかかった。環境認識は合っていて、降りる足だけを間違えた負けです。
この2つは原因がまったく別なのに、同じ言葉で片付けられてしまいます。そして後者を「環境認識不足」と呼んでしまった人は、私と同じようにもっと足を増やす方向へ歩き出します。増やしても、直りません。壊れているのは上の認識ではなく、降り方だからです。
私の言うことも、そのまま受け取らないでください。
負けたトレードを5つ並べて、それぞれに一行だけ書き足してみてください。「上の流れは合っていたか、外れていたか」。それだけです。
書き足した5行が、合っていた何個と外れていた何個に分かれたか。その内訳を、メールの返信で送ってください。個別のお返事はしていません。でも、全部読んでいます。(受け取っていない方は、下のご案内から。)
外れていたのが4つなら、あなたに必要なのは環境認識です。合っていたのが4つなら、必要なのは足を増やすことではありません。
見る足を、減らすことです。
次に読む

——なぜ上の足が優先されるのか。数字で並べると、驚くほど身も蓋もない話でした。

——複数の足で判断が割れる、あの会議そのものを解剖しています。

——2つ下の足に降りたあと、実際に注文をどう置くか。

——では、残りの足には何をさせるのか。四枚の仕事を割り振り直した話です。
決める足と入る足。この2枚で完結する平日の手順を、線の設定から順番まで無料の一冊に組んであります。

【ご確認ください】
本記事は私の経験と考え方の共有であり、特定の金融商品の売買を推奨・勧誘するものではありません。
投資には元本を割り込む損失のリスクがあり、最終的な判断はご自身の責任で行ってください。

