新しいインジケーターを画面に追加した日の、あの充実感。設定を調整して色を変えて、過去のチャートに当てはめて「おお、効いてる」と頷く夜。
私はあれを何度も繰り返しました。そして今、私のチャートに残っているのは移動平均線が4本だけです。オシレーターの類いは、ひとつもありません。
道具を捨てたら弱くなりそうなものですが、実際に起きたのは逆でした。なぜ道具が増えるほど弱くなるのか。鍵は、私が知らずに雇っていた「拒否権」にあります。

道具をひとつ増やすことは、拒否権をひとつ増やすこと
インジケーターを3つ表示するというのは、顧問を3人雇うのに似ています。
3人の意見が揃うのを待って入る——立派な方針に聞こえます。でも実際の相場で3人が全員賛成する頃には、動きはとっくに始まっていて入り口は過ぎています。慎重さの代償はいつも遅さでした。
もっと悪いのは、意見が割れた時です。線は買いと言い、オシレーターは売られすぎと言う。どちらを信じるかを決める基準を私は持っていませんでした。結局その場の気分で片方を選ぶ。つまり道具を増やした果てに、最後の判断は勘に戻っていたんです。
道具はひとつ増えるたび、入らない理由と迷う組み合わせを連れてきます。私が雇っていたのは顧問ではなく、拒否権でした。
増やす動機は、精度ではなく安心だった
では、なぜ増やしてしまうのか。自分を解剖して出てきた答えは単純でした。不安だったからです。
負けるたびに「何かが足りない」と感じる。足りないものを道具で埋めようとする。新しいインジケーターは「今度こそ」という希望をくれるので、追加した夜だけは不安が消える。でも精度は上がらないので、また負けてまた探す。負けるたびに道具を一つ足す。これが、私の聖杯探しの正体でした。
いまは、こう考えています。不安を消すのは分析の厚さではなく、負けた時の被害が決まっていることです。私の安心はインジケーターからではなく、入る前に置いた損切りと毎回同じ小さなリスクから来ています。安心の供給源を分析から切り離せた時、道具を増やす動機は静かに消えました。

4本で足りる、には理由がある
いまの私の画面は、ローソク足と移動平均線4本(何本分を均すかの期間が3・20・60・100)だけです。
なぜこれで足りるのか。私が知りたいことが、突き詰めると2つしかないからです。大きな流れはどちらを向いているか。いまは流れの中のどのあたりか。この2つは期間の違う平均線の並びと傾き、そして価格との距離で読めます。
オシレーターが教えてくれる「買われすぎ」は、私には要らない情報です。流れに乗る人間にとって、買われすぎとはただの強さのこと。「買われすぎ=そろそろ下がる」と読み替えてはいけない数字です。要らない情報が消えると、判断は速くなるというよりそもそも迷いが発生しなくなります。
- 道具をひとつ増やすことは、拒否権をひとつ増やすこと
- 意見が割れた時の基準がなければ、最後の判断は勘に戻る
- 増やす動機は精度ではなく、不安を消すことだった
- 安心は分析の厚さからではなく、入る前に置いた損切りから来る
- 知りたいことは2つだけ。大きな流れの向きと、流れの中のどのあたりか
最後に、実験をひとつ提案します。表示中のインジケーターをひとつだけ非表示にして、1週間過ごしてみてください。分析が崩れるどころか、消したことに気づかない自分がいたら——それが答えです。ひとつずつ消していった先の残りが、あなたの本当の道具です。
ひとつ消して1週間、何が変わったか。あるいは、何も変わらなかったか。結果は下のご案内から無料の一冊を受け取ると届くメールに、返信で送ってください。個別のお返事はしていません。でも、全部読んでいます。

次に読む

——インジの前に、線の引き算。同じ手術の別パートです。

——「今度こそ」の正体。聖杯探しの大きい単位の話です。

——古い道具だけが残っている理由。消える技と消えない描写の話です。
残した4本の線をどの期間で引いて、どう読むのか。私の画面は、設定の数字まで隠さず無料の一冊『たった一つの形』に載せています。

【ご確認ください】
本記事は私の経験と考え方の共有であり、特定の金融商品の売買を推奨・勧誘するものではありません。
投資には元本を割り込む損失のリスクがあり、最終的な判断はご自身の責任で行ってください。

