入金ボタンは、注文ボタンより重い

勝てない時期の口座には、よく似た履歴が残ります。取引履歴ではありません。入金履歴です。

月の頭に「この資金でやる」と決める。月の半ばに溶かす。そして月末「このぐらいなら大丈夫、増えたら戻せばいい」とつぶやきながらまた入金ボタンを押す。エントリーは震える手で押すのに、入金だけはためらいなく押される。心当たりのある方もいるはずです。

私自身はこの階段をFXの前に仮想通貨で転げ落ちました。下がり続ける銘柄に「戻るはずだ」とお金を注ぎ足して、最後は銘柄ごと消えた。今日はあの頃の私が一つも持っていなかった「入金のルール」の話をします。

目次

エントリーには何十個もルールがあるのに、入金にはゼロだった

冷静に数えると、おかしな話でした。

どこで入るか。どこで切るか。どのくらいの量で入るか。トレードの本を読めば、ルールはいくらでも出てきます。私も山ほど作りました。ところが、そのルールで守っている口座そのものに「いくら入れるか・いつ足すか」のルールはどこにもなかった。

一回の取引の量には上限を決めているのに、負けた口座にお金を注ぎ足す行為は無制限。これでは蛇口を閉めて、風呂の栓を抜いているようなものです。

しかも入金ボタンはいちばん判断力が落ちている瞬間に押されます。溶かした直後。「取り返したい」が頭を支配している夜。つまり入金は感情で押される、いちばん大きな注文でした。

追加入金は、負けの確定を先送りする

追い込まれた入金にはいつも言い訳が付いています。

「増えたら戻せばいい」。「ここで種銭を切らしたら、チャンスを逃す」。

私が仮想通貨に注ぎ足していた頃の独り言も、一言一句これでした。

でも本当のところ、あの入金は投資判断ではありませんでした。負けを確定させないための先送りです。口座がゼロに近づくと、それまでの負けが「結果」として目の前に並ぶ。それを直視したくないから、残高を足してゲームを続行する。足した瞬間だけ、負けが「途中経過」に戻ってくれるからです。

そして財布と口座の間の壁が一度壊れると、次は生活のお金が壁の内側に入ってきます。世の中には、教育費や生活費に手を付けるところまで行ってしまった話がいくらでも転がっています。私が失ったのは幸い、自分で貯めたお金まででした。それでも、壁というものが音もなく薄くなっていく感覚はいまでも思い出せます。

いまの私の、入金のルール

いまの私は入金を注文と同じ扱いにしています。ルールは単純です。

戦うお金は先に一度だけ決める。 口座に入れるのは全部なくなっても生活が変わらないと言い切れる額だけ。資金管理の最初の一手は一回の取引量の計算ではなく、口座を作るその日に終わっています。

負けた直後の入金はしない。 追加するかどうかを考えていい場所は月をまたいで記録を見返して、負けの中身が「ルールの中の負け」だったと確認できた後だけ。取り返したい気持ちが体に残っているうちは、入金ボタンに触りません。

一回ごとの取引量を残高から一定の割合で決める話は『「自信があるから多め」が、口座を殺す』に書きました。ただ、その計算はすべて「口座の中」の話です。口座の外からお金が無秩序に流れ込むなら、中でどれだけ精密に計算しても土台が動いています。

入金にも、ルールを置く
  • 一回の取引の量には上限を決めているのに、口座に注ぎ足す入金は無制限だった
  • 入金ボタンは、いちばん判断力が落ちている瞬間に押される
  • 追い込まれた入金は投資判断ではなく、負けの確定の先送り
  • 戦うお金は先に一度だけ決める。全部なくなっても生活が変わらない額だけ
  • 負けた直後は入金しない。考えていいのは記録を見返した後だけ

入金履歴は、感情の記録になっている

もし心当たりがあれば、一度だけ口座の入金履歴を開いてみてください。

日付を負けた日と並べてみる。負けの翌日に入金が並んでいたらそれはお金の記録ではなく、感情の記録です。私の履歴がそうでした。

並べてみて、負けの直後に入金が何件重なっていたか。その件数を、記事末のご案内から無料の一冊を受け取ると届くメルマガに返信で送ってください。個別のお返事はしていません。でも、ゼロ件だったという報告も歓迎します。全部読んでいます。

エントリーの腕を磨く前に、入金ボタンに鍵をかける。地味ですが、私の口座が減らなくなった順番はそちらが先でした。


次に読む

——「認めたくない」が膨らみ切った先で、私に起きたことの記録です。

——口座の中の量の決め方。入金ルールと対になる話です。

——「取り返したい」の夜をどう終わらせるかの手順です。

入金に鍵をかけた後、口座の中で私が回している型はひとつだけです。その中身を、使っているチャート設定ごと無料の一冊に収めてあります。

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【ご確認ください】
本記事は私の経験と考え方の共有であり、特定の金融商品の売買を推奨・勧誘するものではありません。
投資には元本を割り込む損失のリスクがあり、最終的な判断はご自身の責任で行ってください。


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この記事を書いた人

トレードの本質を語ります。聖杯も未来を言い当てる方法もありません。あるのは相場の流れを見極め、優位性が生まれるまで待ち、間違えたら撤退するという地味な積み重ねだけです。私を信じる必要はありません。すべてご自身のチャートで確かめてください。

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