「損切りは浅いほど偉い」。世間でよく聞く言葉です。
私はこれを否定します。その思い込みこそが私を何年も損切り貧乏に縛りつけていた犯人だったからです。
ぎりぎりに置いた損切りが、ほんの数pips——価格のごく僅かな刻み——の揺れでぴょこんと引っかかる。直後、価格は何事もなかったように私が見ていた方向へ走り出す。「方向は……合ってたのに」。同じセリフを一日に何度つぶやいたか分かりません。
かと思えばその悔しさの反動で、今度は損切りを遥か遠くに置いて一発で大きく削られる。
狭すぎても狩られ、広すぎても殴られる。私はその両極を振り子のように行ったり来たりしていました。
長いこと、自分の損切りが下手なのだと思っていました。
違いました。私は損切りを置く場所を「自分の財布の都合」で決めていた。相場は私の財布の中身などまったく知らないのに。今日は私がようやく財布をしまって、相場の側に立てるようになった話を書きます。

相場は、あなたの財布の都合を知らない
今の私が損切りを置く場所は一つに決まっています。入る直前の押しでできた、直近の谷(売りなら山)のヒゲまで含めたすぐ外側です。
昔の私を含め、多くの人は損切りを「いくらまでなら損していいか」で決めます。
でも相場はこちらの財布の中身も、今月の生活費も知りません。相場がただ一つ見ているのは「ここを割ったら、さっきの形が崩れる」という構造のラインだけ。こちらの感情とはまるで別の言語で動いています。
谷の安値より内側に損切りを置くというのは、形がまだ崩れてもいない普通の揺れの中にわざわざ自分の損切りを差し出す行為でした。これが損切り貧乏の正体です。
逆に谷からずっと離して置けば、傷は無駄に深くなる。だから私は、谷のヒゲの先のさらに少しだけ外に置く。狭すぎず、広すぎないその一点です。

ヒゲをどれだけよけるかはその通貨が普段どれだけ暴れるかに合わせます。荒い通貨なら少し広めに、おとなしい通貨なら狭めに。何pipsと一律では決めません。決めるのは私ではなく、その銘柄の素性です。
順番を逆にした日、私はいつも狩られていた
ここは順番がすべてです。
私はまず損切りの場所を構造から決め、その幅が分かってから入れる量を逆算します。一回の負けで失う割合をどの取引でも同じに保つためです。量を先に決めて、損切りを後から場所に合わせるのではありません。逆です。
そして、いちばんやってはいけないのがこれです。
「損切りが遠いと量を増やせないから、損切りを少し近づけよう」。
これをやった瞬間、損切りは構造の内側に滑り込みただの揺れで狩られる側に戻ります。
損切りの位置は構造が決める。量はそれにただ従う。 この順番を逆にした日、私はいつも狩られていました。
「狭い損切りの高リスクリワード」は、絵に描いた餅
ここが私が一番伝えたいところです。
損切りをぎりぎりまで狭くすれば、計算上のリスクリワードはいくらでも美しく作れます。損1に対して利益10、なんて数字も電卓ひとつで出てくる。SNSにもそういう輝かしい数字があふれています。
でもその損切りが普通の揺れで狩られるなら、その10という数字は一度も現実になりません。
絵に描いた餅は何枚並べても腹は膨れない。本当のリスクリワードは「生き残れる損切り」から測ったときにだけ、初めて数字になります。
形が崩れるまで耐えられる場所——谷のヒゲの外——に損切りを置いて、それでもなお損1に対して利益が3まで伸びそうか。届かないならどれだけ形が綺麗でも、その波は私の波ではない。そう決めています。
※ 「私の波ではない」と迷いなく手放せるようになるまでの話は『「これは私の波じゃない」と笑って見送れるまで』に書きました。

入る前に、もう一つ関所がある。幅の比だ
損切りの場所が構造から決まると、入る前にもう一つ機械的なゲートを置けます。
その損切りまでの幅を「1」として、利益が伸びそうな先——次に価格を止めそうな直近の高値や節目——までの幅が「3」に届くか。届くなら通す。届かないなら形がどれだけ綺麗でも、そこで止める。感情ではなく、幅の比だけで開け閉めする関所です。
昔の私にはこの関所がありませんでした。
損切りを構造の外に置けば幅が広がる、広がれば利益が3倍まで届きにくくなる——そのとき私は損切りを内側へずらして帳尻を合わせていた。関所を通したくて、損切りのほうを内側へ動かしていたんです。これでは、関所を置いた意味がない。
動かしていいのは入る/入らないの判断だけ。損切りの位置も、3という基準もこちらの都合では動かさない。動かした瞬間に、損切りは構造の内側へ滑り込みただの揺れで狩られる側へ逆戻りします。(なお利が乗ってから損切りを利益の方向へ引き上げるのは、別の技術です)

- 相場はこちらの財布の中身を知らない。見ているのは形が崩れる構造のラインだけ
- 置く場所は、直近の谷のヒゲの先の少しだけ外。内側は揺れで狩られ、離しすぎは傷が深い
- ヒゲをどれだけよけるかは、その銘柄が普段どれだけ暴れるかで決める
- 損切りの位置が先、量はその幅から逆算する。順番を逆にした日はいつも狩られていた
- 狭い損切りの高いリスクリワードは絵に描いた餅。生き残れる損切りから測る
今日からできる一手
だから、あなたに問いたいんです。
直近であなたが狩られたあの損切りは「ここを割ったら形が崩れる」という構造の外にありましたか。それとも利益との比を合わせたくて、財布の都合で内側へ近づけた場所にありましたか。
——ここに書いたことを私が言ったからと信じてくれなくて構いません。むしろ、信じないでください。
あなたの注文履歴を一つずつ開いて、狩られた損切りの位置を自分の目で確かめてください。答えは私の言葉の中にはありません。あなたのその履歴の中にしか、ありません。
確かめて構造の内側にあったのが何件で、外側にあったのが何件だったか。数えた結果を、記事末のご案内から無料の一冊を受け取ると届くメルマガに返信で送ってください。個別のお返事はしていません。でも、全部読んでいます。
財布をしまって相場の言葉で損切りを置けるようになった日から、私は「方向は合っていたのに」とつぶやくことがほとんど無くなりました。——勝ち方を覚えたのではなく、相場の都合に自分を譲っただけです。
次に読む

——損切り位置が決まったら、量は幅から逆算する。その手順です。

——壁を置く「構造」の正体。なぜそこで止まるのかの理屈です。

——切った後に、戻られた。あの夜の心の持ち方の話です。
その「ここを割ったら形が崩れる」谷の見つけ方と、私が普段開いている画面の設定を無料の一冊で示してあります。

【ご確認ください】
本記事は私の経験と考え方の共有であり、特定の金融商品の売買を推奨・勧誘するものではありません。
投資には元本を割り込む損失のリスクがあり、最終的な判断はご自身の責任で行ってください。

