入っていい理由は、チャートに書いていません

私の条件は、一つも「入っていい」と言っていませんでした。

気づいたのは、自分が入る前に確かめている項目を上から順に読み直した時です。線のどちら側にいるか。期間の違う線が順番に並んでいるか。押し安値が切り上がっているか。ネックライン——下げが一度止められた、直近の戻り高値のことです——を抜けたか。全部で四つしかありません。

一つずつ確かめていって、途中で手が止まりました。

どれも言っているのは、「これが崩れていたら入るな」だけでした。 条件はすべて、私を止めるために置いてあった。止めなかった時に、代わりに何かを許可しているわけではない。ただ、止めなかっただけです。

今日は、その話をします。手法の話ではなく、条件という道具が何をしているのかという話です。私はこれを長いあいだ、逆に読んでいました。

目次

私は条件を数えて、入る理由にしていました

勝てなかった頃、私はチャートを開くとまず材料を集めていました。

数えていたのは、頭の中だけでした。ノートにも書かず、チャートにも残さない。画面を見ながら揃っているものを黙って拾い集めて、ある数を超えたところで指がマウスへ伸びる。あの時間を、私は「分析」と呼んでいました。

だから、記録が一つも残っていません。 前の日に何をどう数えたのか、翌日の私はもう確認できない。確認できないので、同じ材料をまた最初から新しい発見として数え直せてしまう。あの頃の私が同じ間違いを何年も続けられたのは頭が悪かったからではなく、採点表を一度も紙に出さなかったからです。

線の並びが揃っている。価格が長い線から離れている。形も整っている。集まった材料が三つ、四つと増えていくとそのぶんだけ確信が濃くなっていく感覚がありました。材料が増えれば、入る理由も増えていると思っていた。

いま思えば、あれは足し算ではありませんでした。条件を一つ確かめるたびに増えていたのは入る理由ではなく、「まだ止まっていない」という状態だけです。

十個の関門を通っても、通っただけです。関門は、止める仕事しかしていません。

条件を一つずつ、何と言っているか読み直しました

順番に並べてみます。私が使っている条件は、これで全部です。

日足の中期線(20の線)に対して、価格がどちら側にいるか。 これが言っているのは「買うなら線の上、売るなら線の下。逆なら入るな」です。上にいることは、買っていい理由ではありません。買ってはいけない場合を、一つ消しただけです。

期間の違う線が順に並んでいるか(パーフェクトオーダー)。 これが言っているのは「並んでいなければ注文を置くな」です。並びが完成する頃には、私の判断はもう終わっています。並びは後から付いてくるもので、判断の出発点ではありません。

押し安値が切り上がっているか。 これが言っているのは「切り下げたら、その流れはもう終わっている。入るな」です。切り上がっていることはまだ終わっていないという意味であって、始まったという意味ではない。

ネックラインを抜けたか。 これは条件の中でいちばん強く見えますが、抜けなければ注文が約定しないという話でしかありません。抜けたことは、その形が本物だったという証明にはなりません。

四つ並べて、共通点は一つです。どれも「入るな」の側からしか喋っていません。 肯定形で書いてあるものが一つもない。

「揃っている」は、「止められなかった」でしかありません

ここが、私の読み違いの中心にありました。

条件が全部そろった時、私はそれを「許可が出た」と読んでいました。正しくは、「止める理由が今のところ見つからなかった」です。この二つは日本語では近く見えますが、中身が正反対です。

空港の手荷物検査に似ています。検査を通ったからといって、飛行機に乗っていいわけではありません。乗っていいかどうかを決めているのは搭乗券であって、検査ではない。検査は、危ないものを止めるためだけにあります。通過は、資格ではありません。

私がやっていたのは搭乗券を持たずに検査だけを何度も通って、「四つも通ったのだから乗れるはずだ」と考えることでした。しかも困ったことに、検査はいつでもどこかで通ります。相場は毎日動いているので、小さい足のどこかを見れば条件の三つや四つはたいてい揃っている。

揃っていることは、珍しくありません。珍しいのは、その場面が「私が取ると決めた形」に当てはまることのほうです。

だから条件を増やしても、入る理由は増えません

これに気づいてから、道具を増やす気持ちがきれいに消えました。

新しい指標を足す。線を一本増やす。判定の項目を細かくする。やっていることは、止める装置を一つ増やしているだけです。止める装置がいくら増えても、進ませる装置は一つも生まれません。

私は昔、判断に自信が持てないのは条件が足りないからだと思っていました。逆でした。足りていなかったのは条件ではなく、そもそもここが自分の場面かどうかを決める一行です。それが無いまま条件だけ増やしたので、材料は増えるのに決められないという状態になっていました。

やることは、増やす方向ではありませんでした。

入っていい、と言えるものは一つしかありません

私の判断の中で、肯定形で喋る装置は一つだけです。

「この場面は、私が取ると決めた形のどれかに当てはまるか」

当てはまれば、そこは打席です。当てはまらなければ、条件がいくつ揃っていても打席ではありません。名前が付くかどうかだけを見ています。

これも否定形に読めますが、違いは順番です。形に名前が付いた時だけ、そこが打席になる。条件は、その打席を消すためにしか働きません。

私が取ると決めた形は一つです。ただし、その形が現れる階層は二つあります。週足の流れが出ているところで、日足の価格が20の線へ一度近づいてからまた離れていく場面。20の線とは、直近20本の値段をならして引いた平均線です。もう一つは日足の流れが出ているところで、4時間足がその足の同じ線で同じことをする場面。このどちらかに名前が付いた時だけ、先へ進みます。

名前が付いたあとで、はじめて条件の出番になります。線のどちら側か、並びはどうか、押し安値は切り上がっているか。ここから先は全部、せっかく見つけた打席を消しにかかる作業です。私は打席を探すのに一つの問いを使い、その打席を潰しにかかるのに四つの条件を使っています。

順番が逆になると、何が起きるか。条件だけが手元にある状態で入る判断をすることになります。 否定の道具しか持たずに、肯定の判断をしようとする。そうすると、人は「否定されなかったこと」を肯定として使い始めます。私が長いあいだやっていたのは、これです。

条件という道具の、要点
  • 私の条件は四つとも「これが崩れていたら入るな」しか言っていない
  • 条件が全部そろった状態は、許可ではなく「止める理由が見つからなかった」だけ
  • 道具を増やしても、増えるのは止める装置だけ。進ませる装置は生まれない
  • 肯定形で喋る装置は一つ。「この場面は、私が取ると決めた形のどれかに当てはまるか」

最後の許可は、私が出しません

もう一つだけ書いておきます。

打席だと分かって条件も全部通って、それでも私は最後に「よし、入ろう」とは言いません。ネックラインの少し外側に逆指値——その値段に届いたら自動で入る注文——を置いて、その場を離れます。

抜ければ約定します。抜けなければ、何も起きません。入るか入らないかを決めているのは、私ではなく相場です。

これは臆病だからではなく、自分に最後の許可を出させないためです。私の頭は、放っておけば入る理由を作ります。今日書いてきたとおり、条件はそれを止めてくれません。止める装置は「入るな」しか言えないので、入りたい人間を最後まで完全には止められない。

だから、最後の判定を人間の手から外しました。注文を置いた瞬間に、私の仕事は終わっています。

私は今も他の人のチャートを開いて、一瞬「これは入れたかもしれない」と思うことがあります。それ自体は消えません。ただ、そう思ったあとに手が動かなくなりました。思うことと注文を置けることの間に、名前を付ける工程が一つ挟まっているからです。

私は、あなたに何の許可も出せません。この記事も、止める装置の一つでしかない。

直近で「入れたのに」と思った場面を一つ開いて、その時に頭にあった材料を書き出してみてください。そのうち何個が「入っていい」と言っていたかを、一つずつ数える。おそらく、ゼロです。

数えた結果は、記事末のご案内から無料の一冊を受け取ると届くメルマガへ返信で送ってください。「ゼロでした」の四文字で伝わります。

条件は、私を止めるために置いてありました。進ませてくれるものは、チャートの中を最後まで探してもどこにもありませんでした。それは自分で用意しておくものだった、というだけの話です。


次に読む

——今日「止める装置」と書いた並びを、では実際に何に使っているのかという話です。

——四つの条件のうち、私が一度も例外を作らなかった一本の話です。

——名前が付かない場面を、私はどう扱っているかという話です。

私が取ると決めた一つの形を二つの階層それぞれどの足のどの線で判定して、どこに注文を置くのか。順番どおり、無料の一冊『たった一つの形』へ置いてあります。

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【ご確認ください】
本記事は私の経験と考え方の共有であり、特定の金融商品の売買を推奨・勧誘するものではありません。
投資には元本を割り込む損失のリスクがあり、最終的な判断はご自身の責任で行ってください。


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この記事を書いた人

トレードの本質を語ります。聖杯も未来を言い当てる方法もありません。あるのは相場の流れを見極め、優位性が生まれるまで待ち、間違えたら撤退するという地味な積み重ねだけです。私を信じる必要はありません。すべてご自身のチャートで確かめてください。

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