私のパソコンには、買っただけで一度も最後まで読まなかった教材が今も眠っています。
順張り、逆張り、戻り、反発、なんとかの法則。新しいものを見つけるたびに「今度こそこれだ」と思って外して、また次を探す。手法だけがフォルダに積み上がって、口座だけが軽くなっていく。
いちばん苦しかったのは、損切りそのものではありませんでした。
負けたあと自分がなぜ入ったのか、自分で説明できなかったこと。
「なんとなく、形がよかった」。
それしか言葉が出てこない。説明できないものは、直しようがない。私は直しようのない負けを、毎日積み上げていました。
あるとき集めた手法を全部つなげて並べてみて、力が抜けました。
価格の動きは、突き詰めると2つしかなかった。手法が10個あったんじゃない。1つの相場を、10個の名前で呼んでいただけでした。
今日は私が最後にたどり着いた「たった1つの形」と、わざと捨てたもう片方の話を書きます。

結局、価格は2つのことしかやっていなかった
トレンドの途中、価格は一直線には進みません。
一度ペースを落として平均線のほうへ寄り、ひと息ついてまた元の方向へ走り出す。平均線(移動平均線、MA)とは、直近の値段をならして1本にした線です。私が「寄ってきた」と見るのは20本ぶんをならした20の線です。これを延々と繰り返します。一度寄って一服した押し目から、また走り出すあの流れです。
つまり相場で起きていることは、煎じ詰めれば2つだけ。「一度寄って、また離れ始める瞬間」と「行きすぎた価格が、平均線へ戻ってくる瞬間」。
私が10個集めたつもりの手法は、結局この2つの瞬間を10通りの角度から眺めていただけでした。

私が乗るのは「また離れ始める」その一点だけ
2つのうち、私が賭けるのは「一度寄って、また離れ始めるその離れ際」だけです。
理由は、損得の天秤がはっきり片側に傾いているから。
一服してできた谷(売りなら山)のすぐ外に損切りを置けるので、外れた時の傷は手のひらサイズに限定できる。そのうえ離れ際から乗れば、そのあといちばん伸びる区間——一服が終わってから次に止まるまでの、波の真ん中——にちょうど乗れる。
損は手のひらサイズ、利益は腕いっぱい。
この歪んだ天秤こそが、私がこの一点だけに賭けている理由です。
甘い顔をした方の天秤には、二度と乗らない
逆に、私がはっきり手を出さないと決めたのが「離れすぎた価格が、平均線へ戻ってくるのを狙う取り方」——いわゆる戻り狙いです。
これが、いちばん甘く見える。
大きく離れた価格を見ると、私も含めつい「さすがに行きすぎだ、戻るだろう」と思ってしまう。私も何百回そう思って手を出しました。深夜、含み損の赤い数字が膨らんでいくのを「もう少し、もう少し戻れば」と眺めていた夜がいくつもあります。
けれど構造を冷静に見ると、これはさっきとちょうど逆に傾いた天秤でした。どこまで離れるか誰にも分からないので損切りは遠くなり、運よく戻っても伸び幅は短い。
損は腕いっぱい、利益は手のひらサイズ。
形がどれだけ綺麗でも天秤がこちらへ傾く側にあるなら、私は乗りません。
※ この傾いた天秤に乗り続けると口座がどうなるかは『勝率は高かったのに、口座だけが減っていった』に書きました。

絞るのは、妥協ではなく損と利益の比を揃えること
なぜ、たった1つに絞るのか。気持ちの問題ではなく、損得の構造そのものが理由です。
同じ形だけを繰り返すと損切りを置く位置も、利益が伸びる先も、毎回同じ物差しで測れる。だから入る前に、天秤がどちらへ傾いているかが分かる。手法を10個持つと、損切りの位置も伸びる先も手法ごとに変わります。自分がいま、損が小さく利益が大きい側にいるのかその逆なのかが分からなくなる。
手法を増やすのは武器を増やしているようでいて、本当は的をぼかしていく行為でした。
増やすほど、損と利益の比が読めなくなる。減らすほど、天秤が見えてくる。絞ることは妥協ではなく、損得の比を毎回同じに保つためのいちばん攻撃的な選択でした。

- 相場で起きているのは2つだけ。「一度寄って、また離れ始める瞬間」と「行きすぎた価格が平均線へ戻ってくる瞬間」
- 私が賭けるのは離れ際だけ。損は手のひらサイズ、利益は腕いっぱい
- 戻り狙いは天秤が逆。形が綺麗でも乗らない
- 手法を増やすと物差しが増えて、自分がどの天秤に乗っているか見えなくなる
今日からできる一手
ではその「離れ始め」を具体的にどの瞬間、どう待ち伏せて取るのか。そこには手順があります。ただそれを書き始めると一記事まるまる必要になるので、入口の置き方は別記事『相場を追うのをやめて、罠を仕掛けて立ち去る』に譲ります。
今日はまず、これだけ持ち帰ってください。
今日チャートを開いたら、目に映る波を一つずつ「離れ始めか、戻りか」とだけ仕分ける。当てなくていい。ただ2つの箱に放り込むだけです。
その仕分けが指に馴染んだころ、私がなぜ一つしか狙わないのか言葉ではなく手のほうが先に分かっています。
——でも、私が「価格は2つしかやらない」と言ったことを鵜呑みにしないでください。
私に言われて納得しても、あなたの指はまだ何も覚えていません。あなたのチャートを開いて、目の前の波が本当にその2つに割れるのか一つずつ自分の目で数えてみてください。
数えてみて、あなたの波は本当に2つに割れたか。結果は、下のご案内から無料の一冊を受け取ると届くメルマガへ返信で送ってください。個別のお返事はしていません。でも、全部読んでいます。
次に読む

——「離れ始め」の手前に必ずある、2拍目の見つけ方です。

——捨てたはずの「戻り狙い」に、唯一残した例外の話です。

——一点に絞ると決めてから、上達が始まった理由です。
私がたどり着いたこの「たった1つの形」を、どの時間軸のどこで待ち伏せるのか——チャート設定まで含めた全体像をそのまま無料の一冊『たった一つの形』に書き切ってあります。

【ご確認ください】
本記事は私の経験と考え方の共有であり、特定の金融商品の売買を推奨・勧誘するものではありません。
投資には元本を割り込む損失のリスクがあり、最終的な判断はご自身の責任で行ってください。

