雇用統計の夜、私は何もしません

先に、宣言をしておきます。毎月第一金曜日の夜——米国の雇用統計が発表される夜、私は新しく入ることをしません。どれだけ綺麗な形ができていても、です。

勝てなかった頃は真逆に見ていました。指標発表は「一晩で取り返せるチャンス」に見えたんです。発表の直前にポジションを持って、数字が出る瞬間を待つ。上に跳ねるか、下に跳ねるか。当たれば数分で大きく取れる。いま振り返ればあれはトレードではなく、丁半でした。

この記事で渡すのは、経済指標との距離の取り方です。予想の当て方ではありません。「その時間に、そもそも立たない」という話です。

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指標の瞬間だけ、多数決が壊れる

私は普段相場を多数決として見ています。大勢の参加者の総意がチャートに流れとして現れる。私のやることは、その多数決の結果に逆らわずに乗ることだけです。

ところが指標発表の瞬間だけはこの多数決が一時的に壊れます。

数字が出た直後の値動きは票がゆっくり集まってできた「流れ」ではありません。機械の反射と、慌てた注文と、薄くなった流動性が作るただの乱気流——私はそう見ています。スプレッドは開き、価格は上下の両方向に髭を伸ばす。普段なら効いている支持や抵抗が、この数分間だけはあっさり無視されます。

つまり、私が普段読んでいるものがその時間だけ存在しない。読めないものの中に入るのは分析ではありません。

方向を当てた人も、たいてい取れない

「結果を予想して当てれば勝てるのでは」と思っていた時期が私にもあります。

でも、この賭けには二重の無理があります。一つ目。雇用統計の数字そのものを事前に知る方法は私たちにはありません。知りようのないものに口座を賭けるのは手法ではなく、くじ引きです。

二つ目のほうが意地が悪い。仮に方向を当てても、取れないことが多いんです。発表直後は上下両方に振れやすく、最終的に上へ行く夜でもその前に一瞬だけ深く下へ刺すことがある。その一往復で損切りは刈られます。方向の予想は当たったのに、口座は減っている。こんなに割に合わない賭けはなかなかありません。

私の答えは「時間で決めておく」

では、どう付き合うか。私のルールは単純で、内容ではなく時間で決めてあります。

  • 雇用統計・FOMC・消費者物価指数のような大きな指標:発表の2時間前から、発表の30分後まで新しく入らない
  • それ以外の通常の指標:発表の前後30分は新しく入らない

やることは朝の1分だけです。その日の経済指標カレンダーを見て、「今夜は何時から手を出さない時間か」を確認しておく。数字の中身は予想しませんし、読みもしません。私が見るのは内容ではなく、時刻だけです。

これは私のエントリーの考え方と同じです。私は入るときもその場で判断せず、事前に置いた逆指値(罠=先に置いておく自動の注文)に任せます。指標も同じで現場で「入るか、やめるか」を迷わない。カレンダーを見た朝の時点で判断はもう終わっています。相場がいちばん騒がしい時間に自分の判断力を持ち込まない。それだけのことです。

なお、すでに保有しているポジションを慌てて閉じることはしません。損切りの注文が最初から入っているので、最悪の側は決まっています。大きな指標の前に利益が乗っていれば、損切りの注文を引き上げて取れる分を守っておくことはあります。

指標との距離の取り方
  • 指標発表の瞬間だけ、相場の多数決が一時的に壊れる
  • 方向を当てても、発表直後の一往復で損切りが刈られて取れないことが多い
  • 大きな指標(雇用統計・FOMC・消費者物価指数)は、発表の2時間前から30分後まで入らない
  • それ以外の通常の指標は、発表の前後30分は入らない
  • 判断は朝カレンダーを見た時点で終わり。保有中のポジションは慌てて閉じない

「何もしない夜」は、負けではない

指標の夜に何もしないと決めてから、気づいたことがあります。あの夜のドキドキはチャンスの匂いではなく、賭け事の高揚でした。

いまの私は雇用統計の夜にチャートを見ていません。結果は翌朝、動き終わったチャートで確認します。乱気流が過ぎて相場がまた多数決に戻ってから、いつもの場所で待ち伏せる。何も失っていないどころか、静かな夜を月に一度取り返しています。

最後に、宿題を一つ置いていきます。私の言うことは信じなくていいです。ご自身の取引履歴を開いて指標発表の前後30分に入ったトレードだけを抜き出し、損益を合計してみてください。その数字がこの記事の何倍も雄弁なはずです。

合計して出た数字は、(記事末のご案内から)無料の一冊を受け取ると届くメルマガに返信で送ってください。個別のお返事はしていません。でも、プラスでもマイナスでも全部読んでいます。


次に読む

——「入らない」を武器に変える話の本編です。

——派手な動きと取れる動きは別物、という話です。

——「判断を事前に終わらせる」の執行版です。

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本記事は私の経験と考え方の共有であり、特定の金融商品の売買を推奨・勧誘するものではありません。
投資には元本を割り込む損失のリスクがあり、最終的な判断はご自身の責任で行ってください。


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この記事を書いた人

トレードの本質を語ります。聖杯も未来を言い当てる方法もありません。あるのは相場の流れを見極め、優位性が生まれるまで待ち、間違えたら撤退するという地味な積み重ねだけです。私を信じる必要はありません。すべてご自身のチャートで確かめてください。

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