チャートを開いて過去に巻き戻して、ローソクを一本ずつ進める。ここまでは、たぶんあなたも同じです。
違ったのは、そのあとでした。私は3年、進めながら「なるほど、ここで上がるのか」と眺めていました。当時の私は、それを練習だと信じていました。
眺めた回数は、何百回どころではありません。それでも本番の口座は減り続けました。当たり前です。私がやっていたのは練習ではなく、答えの出た問題集を後ろから読む作業だったからです。
順番を変えた日から、同じチャートが別の道具に変わりました。今日は、その順番を全部書きます。才能の話は出てきません。出てくるのは、開く順番と書く一行だけです。

私がやっていたのは、練習ではなく鑑賞でした
過去のチャートには、答えが先に書いてあります。右側を見れば、上がったか下がったかが一目で分かる。
その状態で左から眺めると、人はほぼ確実に「分かったつもり」になります。上がった後の形は、上がるべくして上がった形に見えるからです。私は何百回もそれを見て、何百回も「読める」と思い込みました。
そして本番で、初めて右側が無いチャートに座ります。そこで手が止まる。読めたはずのものが、何ひとつ読めない。私はこれを「本番の緊張のせい」だと思っていました。違いました。練習で一度も、右側の無いチャートを相手にしていなかっただけです。
鑑賞と練習を分ける線は、たった一つです。答えを見る前に、自分の判断を言葉にして固定したかどうか。

【1】取る形を、一つに決める
順番の話をすると、多くの方が二番目から始めます。道具の設定や、練習の時間の作り方から入るのです。
でも最初にやることは、道具ではありません。自分が取る形を、一つに決めることです。
これを飛ばすと、あとの練習が全部濁ります。取る形が決まっていない目で過去チャートを流すと、上がった場所も下がった場所も全部「入れたかもしれない場所」に見えるからです。基準の無い人には、無限のチャンスと無限の後悔しか見えません。
私の形は一つだけです。その中身はここでは繰り返しません。
(別記事『相場を追うのをやめて、罠を仕掛けて立ち去る』に全部書きました)
大事なのは中身より、決め切ったという事実のほうです。一つに決めた瞬間から、練習は「探す作業」ではなく「待つ作業」に変わります。
【2】バーを止めて、進める前に一行書く
ここが練習の本体です。ほかは全部、この一行のための準備だと思ってください。
過去チャートを流していて自分の形に近い場面が来たら、バーを止めます。そして進める前に、一行だけ書きます。頭の中で考えるのではなく、必ず文字にしてください。
書くのは4つです。
- 今どこにいるか:大きい足の流れはどちらを向いているか
- 何を待つか:自分の形が完成するとしたら、どういう形か
- 引き金はどこか:どの値段を超えたら、その形は完成と言えるか
- 注文と損切りをどこに置くか:入る値段と、間違いだと認める値段
書き終えたら、バーを進めます。この順番だけは、入れ替えないでください。

一行書くのに慣れないうちは、1場面で数分かかります。それでいいです。この数分が、本番であなたの手が止まらない理由になります。本番でやることも、まったく同じだからです。先に決めて置いて、あとは相場に任せる。練習と本番で違うのは、右側が見えるかどうかだけになります。
【3】答え合わせは、勝ち負けでしません
バーを進めると、結果が出ます。ここで多くの人が、勝ったか負けたかで自分を採点します。
私は採点の軸を変えました。見るのは一つだけです。書いた通りに実行したか。
- 書いた形が来なかったので、見送った → ◯
- 書いた形が来たので、書いた場所で入った → ◯
- 形が来ていないのに、動きにつられて入った → ✗
- 書いた損切りより手前で、怖くなって切った → ✗
負けても、書いた通りなら◯です。勝っても、書いていない場所で入ったなら✗です。
理屈は単純で、この練習で身につけたいのは「当てる力」ではないからです。同じ場面で同じ判断を、何度でも同じように出せる力です。勝ち負けで採点すると、人は結果に合わせて基準のほうを動かし始めます。それは上達ではなく、記憶の書き換えです。
【4】見送りこそ、記録に残す
入った場面だけを記録する人が、たぶん9割です。私も昔はそうでした。
けれど上達の中身は、入った回数ではなく見送れた回数に出ます。だから私は、見送った場面も同じように残しています。画面を撮って、なぜ見送ったかを一行だけ添えるだけです。
これをやると、しばらくして自分の癖が見えてきます。私の場合は「形が半分しかできていないのに、大きく動いているのを見ると入りたくなる」でした。癖は、記録の中にしか現れません。頭の中の反省は、次の日には消えています。
見送りの記録が10枚、20枚と溜まってくると不思議なことが起きます。見送ることが、我慢ではなく仕事に変わるのです。
【5】早めに、小さく本番に出る
ここは順番を間違えやすい場所です。「練習で完璧になってから本番へ」と考える方が多いのですが、これは永久に本番が来ない設計です。
過去チャートで何百回うまくいっても、自分のお金が動いた瞬間に人は別人になります。指が震える、心臓が鳴る、手が勝手に決済ボタンを押す。この反応は、練習では再現できません。
だから私は、早めに本番へ出ることを勧めます。ただし条件が一つあります。一回の負けで減る額を、口座の資金に対する決まった割合に固定すること。相場の状況にも自信の大きさにも関係なく、いつも同じ重さにします。
痛みが毎回同じなら、人は同じ顔で相場の前に戻ってこられます。バラバラだから、怖くなったり強気になったりするのです。

【6】あとは、同じことを何百回
順番はここで終わりです。あとは、この1から5をぐるぐる回すだけになります。
新しい手法を足す予定は、この順番の中にありません。足したくなったら、それは上達が止まったサインではありません。回数が、まだ足りないだけです。
回数が増えると、最初は数分かかっていた一行が数十秒で書けるようになります。さらに増えると、書く前に手が形を見つけるようになります。恐怖も、気合いではなく回数で薄れていきます。これは私が根性で乗り越えた話ではなく、単に回数の関数でした。
(『自信は、才能ではなく、回数の関数だった』に詳しく書きました)

道具の設定より先に決めます。ここを飛ばすと、あとの練習が全部濁ります。
今どこにいるか/何を待つか/引き金はどこか/注文と損切りをどこに置くか。頭の中ではなく、必ず文字にします。
見るのは「書いた通りに実行したか」だけ。負けても書いた通りなら◯です。
画面を撮って、なぜ見送ったかを一行添える。癖は、記録の中にしか現れません。
条件は一つ。一回の負けで減る額を、口座の資金に対する決まった割合に固定すること。
足したくなったら、それは回数がまだ足りないだけです。
順番を守ると、何が変わるか
最後に、変わることを正直に書いておきます。
この順番で練習しても、勝率は劇的には上がりません。私も相変わらず負けます。変わるのは同じ場面で同じ判断が出せるようになることと、入らない日に何も感じなくなることの2つです。
地味です。派手さは一切ありません。ただこの2つが揃った日から、私は口座を減らさなくなりました。
——そしてここまで書いておいて、最後にこう言います。この記事も信じないでください。
「順番を変えたら変わった」。私にとってはそうでした。でも、あなたにとってそうかは私の文章の中では分かりません。分かるのは、あなたが今日バーを止めて一行書いてみたあとだけです。
明日ではなく今日、一場面だけでいいので試してみてください。書けなかったなら——それが、あなたの練習が今まで前に進まなかった本当の理由です。
今日試した一場面の結果は、メルマガに返信で送ってください。個別のお返事はしていません。でも書けた一行でも書けなかったという報告でも、全部読んでいます。
次に読む

——この順番を、何回まわせばいいのかという話です。

——毎日チャートを開くこと自体を、仕事として設計する話です。

——【5】で書いた「別人になる」の正体を、詳しく解剖しました。
順番の【1】で決める「一つの形」を、まだ持っていない方のために。私の形を、練習でそのまま使える設定つきで一冊に仕立ててあります。

【ご確認ください】
本記事は私の経験と考え方の共有であり、特定の金融商品の売買を推奨・勧誘するものではありません。
投資には元本を割り込む損失のリスクがあり、最終的な判断はご自身の責任で行ってください。

