腕は何ひとつ変えていませんでした。
ある週、まったく同じ形に二度入って二度とも逆へ持っていかれました。
その前の週は寸分違わぬ入り方ですっと利益が伸びたのに、です。
狙う形も同じ。手順も同じ。
なのに、勝てる週と何をやっても削られる週が交互にやってくる。
あの二連敗の週すら、私はその差を「調子」や「運」のせいにしていました。
チャートに向かう前のコーヒーの味のせいにした日すらあります。
でも、本当に無視していたのはもっと手前のことでした。
いちばん大きな足がその週、どんな顔をしていたか。
——たった、それだけです。
ある時から平日にチャートを開く前に、
大きな足の表情を3つに分けるようになりました。
それだけで、削られる週が静かに消えていきました。

大きな足には、3つの顔しかない
私が見るのは、いちばん大きな足(週足)のたった3つの状態です。
どれも感覚ではなく、目で確かめられる線で見分けます。
ひとつ目、並ぶ顔。
短期・中期・長期の移動平均線(週足なら4週・20週・100週線)が重ならず離れて、上から順(売りなら下から順)に並ぶ。
強い、一方向です。
見分け方は——週足の20週線を見ます。週足の終値が2週続けて20週線の同じ側で確定していれば、並ぶ顔です。
ヒゲが反対へはみ出すのは無視。確定した終値だけを数えます。
ふたつ目、箱の顔。
価格が一定の幅を天井まで行っては落ち、床まで行っては戻る。
見分け方は——上限と下限がほぼ水平で高値同士・安値同士がほぼ同じ価格で揃い、
その同じ天井・同じ床で2回以上はね返っていること。
揃った水平の壁が上下に2本引けたら、箱です。
みっつ目、方向の定まらない顔。
短中長の移動平均線が互いに絡み合って、上下の順番が入れ替わる。
高値も安値も揃わず、上限・下限の壁がどこにも引けない。
箱は壁が「揃う」。この顔は壁が「定まらない」。
ただし見る順番だけ決まっています。先に線を見る。線がもつれて寝ていたら、壁が引けてもこちらの顔として扱う。壁の揃いを見るのは、そのあとです。
この顔が、いちばん読めない状態です。

顔が変われば、取り方を変える
ここからが、本題です。
私は3つの顔それぞれで、まったく違う戦い方をします。
並ぶ顔のときは深く戻したところから大きく狙い、長く持つ。
流れが強く太いので一度の押し戻し——上げの途中で一度だけ深く下げる場面——から乗れば、利益はゆっくり大きく伸びていく。
損切りは直前の押しでできた谷のすぐ下に置けるぶん小さく、利益はその3倍ほどを狙います。急がず、待ちます。
箱の顔のときは揃った壁の端から短〜中期で取って、さっと引く。
床で転換の形——日足で、下げが前の安値を割らずに止まり、直前の戻り高値を超えたこと——を確かめてから買い、天井で手じまう。流れが太くないので欲張らず、箱の幅のぶんだけいただく。(床に触れた瞬間に反射で買う、という意味ではありません。この下げ止まりの形を確かめてから入るのは、ここでも同じです)
並ぶ顔と同じ気分で長く持つと、反対の壁で止められます。
方向の定まらない顔のときは、触らない。
壁も引けず、向きも決まっていない場所はどちらに賭けても五分。
五分の賭けを繰り返せば、手数料のぶんだけ静かに削られていきます。
揉み合いは「我慢して見る」のではない。
最初から、監視リストから外す。

週末にまとめて分けると、平日が静かになる
この分類を私は平日には、やりません。
値動きの真っ最中に「これは箱か、並びか」と迷うと、
欲しい理由のほうに寄って、見てしまうからです。
だから相場が止まっている週末に、まとめてやります。

手持ちの通貨を一覧で開き、一つずつ「並ぶ・箱・揉み合い」のどれかを書いていく。
そして綺麗に並んでいる数銘柄だけをその週の戦う相手として、手元に残す。
箱は壁の端で取れる候補として横に置き、揉み合いは丸ごと捨てる。
※ この週末のふるいがけだけを主題にした話が『通貨ペアは、私が選びません』です。
平日にやることは、もうほとんど残っていません。
週末に選んだ数銘柄を眺め、決めておいた取り方をなぞるだけ。
全部の通貨を追いかけていた頃は、
揉み合いの通貨にまで手を出して、いちばん読めない場所で五分の賭けを繰り返していました。
綺麗に並んだ数銘柄だけに絞ると戦う回数は減るのに、勝ち残る回数は増える。
減らすことが、増やすことに直結する。
この逆説に気づくのに、私はずいぶん時間をかけました。
- 並ぶ顔=線が離れて一方向。深く戻したところから大きく狙い、長く持つ
- 箱の顔=上限と下限が水平に揃う。壁の端から短〜中期で取って、さっと引く
- 方向の定まらない顔=壁がどこにも引けない。触らない
- 分けるのは平日ではなく週末。平日は決めておいた取り方をなぞるだけ
触らない相手を決められるかが、腕の半分
私が「調子」だと思っていたものの正体は、
ただ戦う前に相手の顔を見ていなかったこと。それだけでした。
同じ手が通用する相手にだけ、その手を出す。
通用しない相手は、土俵に上げない。
顔を見てから戦う者は、調子の波に振り回されません。
相手を選んでいるのは、いつもこちらの側だからです。
世間は、たくさんの通貨を見てたくさん戦える人を上手いと呼びます。私の実感は、逆です。
本当に強い人ほど、戦う相手をほとんど捨てている。触らない通貨を決められることが、腕の半分です。
私はそれを決めずに全部の通貨を相手にして、削られていました。
次に読む

——「並ぶ顔」の中で、実際に狙う場所はここです。

——週末にまとめて決めて、平日は待つだけ。この運用の全体像です。

——「相手の顔を見る」のカレンダー版。荒れる時間を先に避けます。
相手の顔を見分けたあと、「並ぶ顔」のどこから乗るのか。週末の仕分けから入り方までの全体像を、無料の一冊『たった一つの形』に用意してあります。

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本記事は私の経験と考え方の共有であり、特定の金融商品の売買を推奨・勧誘するものではありません。
投資には元本を割り込む損失のリスクがあり、最終的な判断はご自身の責任で行ってください。

