押しの深さは、合否と関係なかった

押しは深いほど弱く、浅いほど強い——私はそう測っていました。

浅く横に流れただけの押しを見ると「この流れは強い、間違いない」と身を乗り出す。逆にずるずると深く戻ってきた押しを見ると「勢いが落ちた、これはもう終わりだ」と、チャートを閉じる。深さがそのまま強さの目盛りだと信じていたんです。

その物差しで何をしていたか。浅い押しばかりを探して待ち伏せし、たまに来る深い押しを自分から捨てていました。しかもその「深い押しの後」に限って、価格は何日も走っていく。走った跡を後から眺めて、「今回は勢いが落ちていたはずなのに」と首をひねる。同じ首のひねり方を、何度もしました。

原因は、腕ではなく物差しでした。深さは、強さの目盛りにはなりません。私が測るべきものは、最初から別のところにありました。深さの代わりに何を測るようになったのか——その取り替えの顛末を書きます。

目次

押し戻しには、2つの顔がある

上位の流れに乗った価格が動き出したあと、いったんペースを落として戻す。ここがエリオット波動でいう第2波です。この第2波の見た目は、大きく2つに分かれます。

ひとつは、はっきりと深く戻る顔。移動平均線のあたりまで、あるいは前の谷の近くまでしっかり押してくる。チャートを開いた人が「あ、崩れたかな」と一瞬ひやりとする形です。

もうひとつは、ほとんど戻らない顔。価格は横に寝たまま数本を消費して線に深く触れることもなく、また走り出す。押しというより、ひと呼吸のような形です。

私はこの2つを、長らく優等生と劣等生に分けていました。横に寝る方が優等生、深く戻る方が劣等生、と。

分ける必要は、ありませんでした。どちらも合格です。どちらも、私が入る候補になります。

深い押しの後に、押しが終わってからの再上昇——エリオット波動でいう第3波——が走ることもある。浅い押しの後に第3波が走ることもある。どちらの顔でも、走る時は走ります。私が首をひねっていた「深かったのに走った」は例外ではなく、はじめから当たり前の光景だったわけです。

深さで切り捨てると、いちばん取りやすい形を捨てる

もし深い押しを「弱い」として外すと、何が起きるか。

深く戻る押しは、いちばん深い谷をはっきり残してくれます。谷がはっきりしているということは、損切りを置く場所が一目で決まるということです。谷の少し外側に置けばいい。そして戻りが深いほど価格は流れの根元まで降りてきますから、そこから走った時に取れる幅は大きくなります。

損切りが決めやすくて、伸びる幅が大きい。損失1に対して利益がいくつ乗るか——この比率でいえば、深い押しは条件のいい部類です。

一方の浅い押しはどうか。谷が浅いので、損切りは近くに置けます。ただし価格はもう流れの根元から離れていますから、伸びしろの一部は先に食われています。近くで切れる代わりに、取れる幅を前借りしている形です。

つまり2つは、優劣ではなく別の顔つきの打席です。それを「深いから弱い」の一言で片方だけ捨てていたのが、以前の私でした。いちばん損切りを置きやすい、いちばん条件のいい形を自分の手で毎回追い出していたわけです。

見送りは、本来なら痛くありません。取れない場面を見送るのは、ただの正解です。けれど「取れる場面を、間違った物差しで見送る」のは話が違います。あれは節約ではなく、純粋な取りこぼしでした。

私が見ているのは、たった2つです

では何を測るのか。深さの代わりに、私は2つだけを見ます。順番も固定です。

ひとつ目——前の安値を切り上げているか。

上を向いた流れなら、押し戻しの谷はひとつ前の谷より高い位置で止まってほしい。ダウ理論でいう押し安値が切り上がっている状態です。前の谷まで下がりきる前に拾われたということは、買い手がそれだけ前のめりに待っていたということ。逆に前の谷を割り込んだら、その流れの足腰は崩れています。深さの話ではなく、位置の話です。

ふたつ目——押しを見ている足の、20の線。

私が画面に出している移動平均線は4本だけです。3・20・60・100。押し戻しの合否で見るのは、そのうち20の線——ただし押しを見ている足の20の線です。日足の流れを追っているなら、押しは一つ下の4時間足で見て線もその4時間足の18の線を見ます(4時間足の中期線だけ、私は18本に設定しています)。

ヒゲが一時的に線の向こう側へはみ出すのは構いません。その足の終値が2本続けて線の反対側に残ったら、そこで最初の走りは否定されたと見ます。ですからこれも、どれだけ深く突っ込んだかの話ではありません。終値が、線のどちら側に確定したかだけです。

そして順番を、絶対に逆にしないこと。先に安値の切り上げ、線は後から添える。

線ばかり見ていると、これが起きます。「20の線の上で耐えている、まだ生きている」と安心している間に、前の谷はもう割られている。線は動きますが、前回の安値は動きません。動かない事実を先に確認して、動く線を後から重ねる。順番を守るだけで、見落としが一段減りました。

本当の不合格は、たった一種類だけです

では、私が見送る形は何なのか。押し戻しが、一度も無いまま走り切ってしまった時だけです。

動き出した価格が戻すことなく、ひたすら一方向へ伸びていく。第2波と呼べる谷が、どこにも刻まれない。この形には、乗る場所がありません。ネックライン——下げが一度止められた、直近の戻り高値のこと——もできず損切りを置く谷もできない。掴む取っ手が、どこにも出ていない壁です。

こういう時、私はこう数えます。

「取れない動き出しだった」。

腕が悪くて取り逃したのではありません。最初から取る場所が生まれなかった。あれは私の打席ではなかった——それだけです。この一行で片づけられるようになってから、走り抜けていく価格を見ても手が伸びなくなりました。

深い押し、浅い押し、押しの無い直行。合否の線は、深いか浅いかの間には引かれていません。線は、押しが有るか無いかの間に引かれています。

押し戻しの合否、要点
  • 深い押しも浅い押しも、どちらも合格。深さは強さの目盛りにならない
  • 深く戻る押しは谷がはっきり残る=損切りが決めやすく、伸びる幅も大きい
  • 見るのは2つ。前の安値を切り上げているか(先)/その足の20の線の側に終値が残っているか(後)
  • 不合格は一種類だけ。押し戻しが一度も無いまま走り切った時

目盛りを取り替えた日から、打席が増えた

物差しを替えて、真っ先に変わったのは打席の数でした。

以前は浅い押しだけを探していたので、何度も「今回は勢いが落ちたから見送り」と自分に言い聞かせていました。今は、深く戻った押しも同じ顔で迎えます。前の谷を切り上げていて、終値が20の線の反対側に居座っていない。それなら深さは問いません。ただ、注文を置きます。

強い流れを見分ける目が良くなったわけではありません。要らない条件を、ひとつ捨てただけです。

チャートは、深さで合否を教えてくれたことは一度もありませんでした。教えてくれていたのは、いつも谷の位置と終値の側だけ。私が勝手に深さという目盛りを持ち込んで、自分の打席を削っていたんです。

——この記事は、証拠になりません。証拠は、あなたの過去のチャートの中にあります。

宿題をひとつだけ置きます。あなたが「勢いが落ちたから見送った」と判断して、その後に価格が走っていった場面を過去のチャートから3つ探してください。そしてその押しの谷が前の安値を切り上げていたかどうか、終値が2本続けて20の線の向こう側に残っていたかどうかだけを見てください。深さは、いっさい見ないで。

3つのうち何本が、条件を満たしていたか。もし満たしていたのなら、それは相場が難しかったのではなくあなたの物差しが1本余っていただけです。

3つ探して、何本が条件を満たしていたか。その数字だけ、下のご案内から無料の一冊を受け取ると届くメルマガへ返信で送ってください。個別のお返事はしていません。でも、「探したけれど1本も見つからなかった」でも構いません。全部読んでいます。

私は深さを測るのを、やめました。測るのは、位置だけです。


次に読む

——そもそも、なぜ押し戻しが全ての答えになるのか。手前の一枚を見る話です。

——押し戻しが「無い」波の話。取れない動き出しを、笑って数える側の記事です。

——なぜ線より先に安値を見るのか。順番の根っこにある描写の話です。

深さを捨てて位置だけを測る——その位置を、どの足のどの線で見てどこに注文を置くのか。判定から発注までの順番を、私の画面の設定そのままで無料の一冊『たった一つの形』にしてあります。

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本記事は私の経験と考え方の共有であり、特定の金融商品の売買を推奨・勧誘するものではありません。
投資には元本を割り込む損失のリスクがあり、最終的な判断はご自身の責任で行ってください。


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この記事を書いた人

トレードの本質を語ります。聖杯も未来を言い当てる方法もありません。あるのは相場の流れを見極め、優位性が生まれるまで待ち、間違えたら撤退するという地味な積み重ねだけです。私を信じる必要はありません。すべてご自身のチャートで確かめてください。

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