相場を追うのをやめて、罠を仕掛けて立ち去る

白状します。私が勝てなかった本当の理由は、手法ではなく執行が怖かったことでした。

形は分かる。ここで入ればいいことも、頭では分かる。なのにいざその瞬間が来ると、指がマウスの上で固まる。価格が上下にぴくぴく震えるたび、心臓も一緒に跳ねる。

「今だ、いやまだだ、いや」。

迷っているうちにタイミングは過ぎ、悔しさで遅れて飛び乗り、刈られる。

私はいつも自分がいちばん弱くなる瞬間に、わざわざ自分を立たせていました。動いている価格を目の前で、手で捕まえようとしていたんです。

ある日、根本から発想を変えました。獲物を追いかけて捕まえるのをやめて、罠だけ仕掛けてその場を立ち去る。これを覚えてから、恐怖の“居場所”が無くなりました。怖さが消えたというより、怖さが顔を出す場面に私がもう立っていない。なぜ執行は怖いのか。その心理のからくりと怖さの居場所を消す段取りを、順に書いていきます。

目次

怖いのは、その場で見てその場で決めているから

種を明かせば、当たり前でした。

価格が暴れている真っ最中にそれを見ながら「入るか・やめるか」を決めようとすれば、人は怖い。人間が冷静さを失うのは、たいてい目の前で何かが激しく動いている時です。私はわざわざ、その一番無理な状況に毎回自分を放り込んでいました。

だから、判断を「その場」から引き剥がすことにしました。

動きを見る前にまだ静かなうちに、「もしこう動いたら、自動で入る」という仕掛けだけを先に置いてしまう。あとは、その場を離れる。価格が暴れる瞬間、私はもうそこにいない。

一番弱くなる場所に最初から立っていなければ、弱さは発動しようがないんです。

谷を2つ作って、戻り高値の少し外に罠を置く

具体的な罠の置き方は、三行で書けてしまうほど単純です。

価格が一度戻して、谷を作る。そこから少し跳ね返ってまた戻して、もうひとつ谷を作る。谷が2つできると、その間に「戻り高値」——一度跳ね返った天井——が見えてきます。チャートの教科書でいう、ダブルボトムのネックライン(売りならダブルトップ)です。

私が罠を置くのは、この戻り高値(ネックライン)のほんの少し外側。

買いなら、ネックラインを抜けたら自動で買う注文(逆指値)を置く。同時に、損切りは2つの谷の低いほうのヒゲを含めたすぐ外に置いておく。

「すぐ外」の幅を、私は自分の気分では決めません。罠を置いている、その画面の足1本がふだん動く幅を基準にします。動きの大きい通貨なら外側に広く、静かな通貨なら狭く。どの通貨にも同じ幅を一律に当てるより、これのほうが素直です。

決め方の順番も、逆にしないでください。先に損切りの位置が決まって、そこから注文量(ロット)を逆算する。量を先に決めて損切りを内側へ寄せると、まだ谷が壊れていない——形がまだ生きている——場所に損切りを置くことになります。形が否定される前に、自分だけ先に降ろされる位置です。ずらした瞬間に、罠は罠でなくなります。

置いたら、あとは画面を閉じる

これで、罠は完成です。あとは画面を閉じる。価格が戻り高値を抜けて走り出せば、罠は勝手に作動して私はもう乗っている。抜けずに崩れていけば、罠はかからない——つまり何も起きません。損も出ません。

入るのも、見送るのも、相場が決める。私はどちらに転んでも構わない準備だけして、立ち去る。

ひとつだけ注意があります。罠を置けるのは、戻り高値が見えてから。最初の谷ができただけの段階では、まだ戻り高値が無いので置けません。一度跳ね返って、ネックになる戻り高値が顔を出してから。焦って早く置こうとして、私は毎回そこで失敗していました。

当てるな。勇気を出すな。任せろ

この置き方をしてから、私の仕事は3語になりました。置く、待つ、任せる。

罠を置いたら、もう私にできることは何もありません。価格がどう動くかを当てる必要もない。「えいっ」と勇気を振り絞る必要もない。本物の動きか、騙しか——それすら私が見破る必要はないんです。本物なら罠が作動し、騙しなら作動しない。判定はぜんぶ相場に任せる。当てにいかない。立ち会わない。

唯一、サボれないことがひとつだけあります。罠を置く前に、その押し戻しがちゃんと「耐えた」かを目で確かめること。罠を置いているその画面で押し戻しを支えている20の移動平均線を深く割らず、前回の安値を切り上げているか。ここだけは、自分の目でやる。逆に言えばサボってはいけないのはそこだけで、あとは全部、置いて待って任せる。

罠を仕掛けて立ち去る、要点
  • 執行が怖いのは、その場で見てその場で決めているから。判断を先に終わらせる
  • 谷が2つできて戻り高値が見えてから、その少し外側に逆指値を置く
  • 損切りは2つの谷の低いほうのヒゲの外。先に損切り位置、そこから注文量を逆算する
  • 置く、待つ、任せる。サボれないのは、押し戻しが耐えたかの確認だけ

足りないのは、強い心臓ではない

執行が怖かった頃の私に、いま声をかけられるならこう言います。お前に足りないのは、強い心臓じゃない。弱い自分を現場から先に逃がしてやる段取りだ、と。

狩りに行くのをやめて、待ち伏せに変える。たったそれだけで、怖さの居場所が無くなります。これは精神論ではなく、ただの配置換えの話です。

試すのは、次の一回だけで構いません。入らずに罠だけ置いて、画面を閉じてみてください。閉じた瞬間に、何かが軽くなるはずです。

世間は勇気を出して飛び込め、と言います。私はもうその逆を行きます。飛び込まない。罠だけ置いて、立ち去る。臆病なまま勝てる場所を、私はようやく見つけました。

罠だけ置いて画面を閉じてみたら、何がどう軽くなったか。その結果は、記事末のご案内から無料の一冊を受け取ると届くメルマガに、返信で送ってください。個別のお返事はしていません。でも、全部読んでいます。


次に読む

——罠を置く前の、唯一サボれない確認の詳細です。

——罠が作動した「あと」の段取り。降り方も先に決めておきます。

——罠に乗せる量の決め方。ここも判断を事前に終わらせます。

——では、その罠はいつ置くのか。形の完成を待たない理由の話です。

罠を置く前の話——そもそもどの相場を選び、どの画面の前に立つのか。その入口から立ち去るまでの段取りを、私の設定そのままに一冊へ収めました。

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本記事は私の経験と考え方の共有であり、特定の金融商品の売買を推奨・勧誘するものではありません。
投資には元本を割り込む損失のリスクがあり、最終的な判断はご自身の責任で行ってください。


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この記事を書いた人

トレードの本質を語ります。聖杯も未来を言い当てる方法もありません。あるのは相場の流れを見極め、優位性が生まれるまで待ち、間違えたら撤退するという地味な積み重ねだけです。私を信じる必要はありません。すべてご自身のチャートで確かめてください。

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