「根っこから取りたい」の正解は、底の一点ではなかった

「いちばん安いところで買って、いちばん高いところで売りたい」。

この欲を、私は疑ったことすらありませんでした。だって、根っこから取れれば値幅は最大になる。当たり前に正しいはずだ、と。

正しさを信じて、私は魚で言えば頭の先——底のいちばん先端に何度も素手を伸ばしました。

ここが底だと信じて買い、まだ下があって損切り。少し下でまた信じて、また損切り。

根っこを取りたい欲は、私をまだ何も決着していない場所へ繰り返し突っ込ませました。負けが込むほど、皮肉なことに私は「もっと根っこから取らなければ」とさらに先端へ手を伸ばしていったのです。

転機は欲を否定したことではありません。この欲を、叶え方ごと取り違えていた——そう気づいたその瞬間でした。

目次

前提——先端は「未確定」、真ん中は「確定」

短く、前提を置きます。

魚の頭の先(底の先端)と尻尾の先(天井の先端)は、いちばん美味しそうに見えていちばん未確定な場所です。

底の先端は、上がるか下がるかまだ決まっていない。そこを当てにいくのは、五分の賭けに金を置くこと。だから私は頭も尻尾もくれてやり、確定して走り出した胴体だけを取る——という方針に変えました。

この「先端を捨てて、真ん中を取る」という話そのものは別記事『派手な第3波より、その手前の「一度の押し戻し」を見ろ』で深く掘ったのでここでは前提として畳みます。

本記事で向き合いたいのは、その先にあるひとつの抵抗です。「真ん中だけ取れ」と言われても、根っこから取りたい欲は消えてくれない。 その欲をどう成仏させるか。

私は長いあいだ、根っこのすぐ手前に手を伸ばし続けていた

私が長年つかえていたのは、ここでした。

「真ん中を取る」が正しいのは、頭で分かる。でも、根っこを逃す悔しさがどうしても先端へ手を伸ばさせる。

抜け道は欲を否定することではありませんでした。叶える場所を、一点だけずらすことです。

「根っこから取りたい」の本当の正解は——底の先端ではなく、転換が確定したその瞬間から取ること

転換が確定する地点は、底の先端より少し上にあります。なので、取りこぼす幅は出ます。それでも先端で三度四度と刈られる損を足せば、確定を待った方が手元に残ります。しかも当たる確度は跳ね上がる。

値幅と確度の、両取りです。

私が欲しがっていた根っこは、底の先端ではなく転換が確定した直後にありました。長いあいだ、私はそのすぐ手前に手を伸ばし続けていたのです。

ここで言う「確定」は気分ではありません。目で数えられる形が完成したかどうかです。

その形をどう数えるか(谷を2つ作って、その間の戻り高値——下げが一度止められた高さ——を抜けたか)は別記事『相場を追うのをやめて、罠を仕掛けて立ち去る』にそのまま書きました。手順としては、こうなります。

  1. 底の先端は当てにいかない(まだ未確定だと、正直に認める)。
  2. 転換が確定する形の完成を待つ(気分でなく、目で数えられる合図が出るまで動かない)。
  3. 確定したら、走り出す真ん中に乗る。
  4. 出口は欲張らない(節目で段階的に降りる手順は→別記事『伸びる波を、全部握ろうとして全部失う』)。

根っこを欲しがる気持ちが、損切りの回数を何倍にも膨らませていた

確定を待つようにして、思わぬ副産物がありました。損切りの回数そのものが減ったのです。

先端を取りにいっていた頃は一つの下落のなかで底だと信じては刈られ、少し下でまた信じては刈られと同じ向きに何度も刺されていました。

一回の傷は浅くても、それが三度四度と重なればまとまった痛手になる。根っこを欲しがる気持ちが、損切りの回数を静かに何倍にも膨らませていたのです。

確定した一点だけで入るようにしてから、この「同じ相場で繰り返し刺される」がまず消えました。傷は浅いまま、実りだけが腕いっぱいに伸びる。

先端を手放したことで、私はかえって根っこに近いところから乗れるようになっていました。

根っこの取り方、要点
  • 底の先端と天井の先端は、いちばん美味しそうに見えていちばん未確定な場所
  • 欲しかった「根っこ」は、先端の一点ではなく転換が確定した瞬間に埋まっている
  • 確定は気分ではなく、目で数えられる形が完成したかどうかで決める
  • 確定を待つと、同じ相場で繰り返し刺される損切りが消える

欲を捨てろ、という話ではありません。根っこから取りたいなら、先端ではなく確定の瞬間を狙え。

全部を取ろうと、先端へ手を伸ばす者がいちばん取り逃す。先端を諦めた私の皿に、結局いちばん大きな身が残ったのです。

その話を今日は書きました。

けれど、入り口の話はまだ半分にすぎません。残りの半分は出口にあります。どれだけ良い場所で乗っても降り方を間違えれば、せっかくの実りはするりとこぼれ落ちる。

「いつ、どこで降りるか」——根っこと同じくらい私を長く苦しめたその問いは、また別の記事でゆっくりほどいていきます。


次に読む

——本文で予告した「出口」の話。ここでほどきました。

——根っこを逃しても大丈夫。同じ流れの中で、乗り場は何度でも来ます。

——底で入れない悩みの正体を、入口の設計から突き止めた話です。

「転換の確定」を数えるための目印を、私はいつも同じ画面で見ています。その見ている足とチャート設定ごと、待ち方の全体を無料の一冊に起こしました。

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本記事は私の経験と考え方の共有であり、特定の金融商品の売買を推奨・勧誘するものではありません。
投資には元本を割り込む損失のリスクがあり、最終的な判断はご自身の責任で行ってください。


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この記事を書いた人

トレードの本質を語ります。聖杯も未来を言い当てる方法もありません。あるのは相場の流れを見極め、優位性が生まれるまで待ち、間違えたら撤退するという地味な積み重ねだけです。私を信じる必要はありません。すべてご自身のチャートで確かめてください。

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